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昨今、新たにITエンジニアの副業・複業の受け入れを検討する企業が増えています。
その背景には、ITエンジニアの働き方として副業・複業が広がりや、ITエンジニアの人材不足による就業形態の見直しなどがあげられます。
しかし、いざ採用をスタートしても時給の相場が分からず、いくらに設定するべきか、現在提示している価格が妥当なのか、と疑問を持たれている企業の担当者の方も多いのではないでしょうか。さらには、ITエンジニアが保有するスキルによっても価格が異なるため、スキル別に時給を把握する必要があります。
そこで本記事では、プロダクト開発人材の複業転職プラットフォーム「Offers」のデータを元に、実際のITエンジニアのスキル別平均時給とその標準偏差をご紹介します。
ダウンロード版では年間成約件数10件以上のスキルセットに拡大し、データベーススキルやデザインスキルを含めたより詳細な副業・複業人材の時給事情について取り上げていきます。
プログラミング言語別採用決定時給
プログラミング言語別採用平均決定時給について、年間成約件数30件以上のスキルセットをプロットしたものを示します。グラフ内赤線は成約数を示しています。
平均時給を降順に並べた場合、Objective-C、Swift、C、C++、Ruby、Rust、Java、Go、Kotlinと並びます。
いわゆるモダン言語に囲まれる形でC、C++、C#、Javaが存在していますが、これにはサービス登録時に情報系大学出身者が在学中に身に着けたものも自己申告スキルとして含まれています。そのため、コンピュータサイエンスの基礎が身についている人材や、経験の長い人材の時給が高い傾向にあると考えられます。
Objective-CについてはOffers内ではSwiftに移行している案件が中心である一方で、Objective-Cから長きにわたってiOSアプリケーションに関わっている人材のほうが平均時給が高い傾向にあると言えます。
スマートフォンネイティブアプリケーションで用いられるSwift、Kotlinについては成約件数がRuby、Java、Goといったサーバサイド言語と比べて1/2程度となっています。プレイヤーが少ないために金額が上がっていると考えられ、最低時給もサーバサイド言語が1,000-1198円であるのに対し、Swift 2,000円、Kotlin 1,500円と高値となっています。
フレームワーク・ライブラリ・ランタイム等別採用決定時給
フレームワーク・ライブラリ・ランタイム等別採用決定平均時給について、年間成約件数30件以上のスキルセットをプロットしたものを示します。グラフ内赤線は成約数を示しています。
平均時給を降順に並べた場合、React Native、AngularJS、Node.js、Redux、Ruby on Rails、React、Vue.jsと続きます。React、Vue.js、Nuxt.js、Next.jsの平均時給については4,200円前後であり、差は小さいと言えます。
成約数としてはReactが高く、続いて僅差でVue.jsが続きます。Vue2のEOL(End Of Life、サポート終了)が2023年末とアナウンスされており、アサイン可能な人材でVue3への移行や他への移行が話題となっています。今後のシェアに影響することが予想されるため、注目が集まります。
インフラスキル別採用決定時給
インフラスキル別採用平均決定時給について、年間成約件数30件以上のスキルセットをプロットしたものを示します。グラフ内赤線は成約数を示しています。
平均時給を降順に並べた場合、Kubernetes、ECS、Dockerといったコンテナ技術や、TerraformのようなIaC(Infrastructure as a Code)が目立ちます。中途採用の場を見てもまだまだ経験者が少ないために高額になるケースがあります。
またインフラスキルの観点で興味深い点としてAzure、GCP、AWSの差があります。AzureとGCPの平均時給の差は200円程度ですが、GCPとAWSを比較するとGCPの方が約450円高いという状態です。成約数を比較すると 、Azure:GCP:AWSの比率は3:10:20となっています。GCPとAWSを比較するとAWSの方がGCPの2倍の成約数がありますが、AWSの方が400円ほど平均時給が低いことが観察されました。近年AWSではなくGCPを採用する企業も増加していることから、需給バランスの差が影響していると考えられます。
AI・分析・解析人材スキル別採用決定時給
AI・分析・解析人材スキル別採用決定時給について、年間成約件数10件以上のスキルセットをプロットしたものを示します。グラフ内赤線は成約数を示しています。
平均時給を降順に並べた場合、BigQueryが最も平均時給が高く最低時給も3,000円となっており、企業での需要の高さが伺えます。
次いでニューラルネットワークや機械学習の人材が続きます。特にニューラルネットワークについては標準偏差が大きく、成約数の少なさと相まって相場がまだ固まっていないことが見て取れます。今後人材が増え、市場が形成されることでより時給が上がることが予想されます。
副業・複業人材契約のポイント
モダンなスキルセットを持っている人材ほど時給が高い傾向にあります。特にGCPやSwiftといった需要に対して供給が追いついていないようなものであれば金額が高い傾向にあります。こうした事情を考慮しながら予算計画を立て、IT人材確保の一つの選択肢として副業・複業人材を取り入れていきましょう。